救急

救急医療における知っておきたい薬物動態

抗菌薬はPK/PDとMICを考慮し投与設計することでその薬の潜在能力を最大限に発揮することができます。
薬によってパラメータリンクは変わります。
近年ではTAZ/PIPCの4時間点滴のエビデンスも確立されつつあります。

アミノグリコシド

濃度依存的に殺菌作用を示します。
パラメータはCmax/MIC≧10とAUC/MIC≧80-100が指標になります。
有名な副作用である腎障害はトラフに相関関係があります。
トラフ2μg/mL未満で腎障害発現率は2.5%未満におさまりますが、
トラフ2μg/mL以上では9.3倍と4倍に上昇します!
また、Vdが非常に小さい=細胞外液に薬がとどまるため実測体重に基づく投与設計はNGです。必ず理想体重から算出しましょう。

グリコペプチド

具体的にはバンコマイシンとテイコプラニンがあります。
どちらもTDM必須の薬になります。
VCMはガイドラインが一新されAUC/MICを指標とする2ポイント採血でAUCを評価します。
TEICはAUC/MICやCmax/MICが良好な指標となりますが、細菌学的効果に対するPK/PDパラメータは確立していないためトラフ評価が推奨されています。

ボリコナゾール

こちらは抗真菌薬です。
AUC/MICが指標となりますが、AUC算出は難しいためトラフ値/MICが代替指標として用いられます。
アジア人の場合は、CYP2C19のPoorMetabolizerが約2割います。
→すなわち、代謝されにくい=血中濃度が上昇しやすい
高トラフに注意して投与設計しないといけません。

また臨床用量で代謝酵素が飽和するため血中濃度の急上昇も考慮します。
トラフ4-5μg/mLで肝障害、4μg/mLでは幻聴幻覚といった神経障害の可能性が増加します。

抗不整脈薬

TDM頻度としてはそこまでありませんが、効果・副作用は不整脈の場合かなりセンシティブになるので神経を使います。

ジソピラミド

約50%が未変化体として腎排泄されるため腎障害時は減量が必須。
蛋白結合率が血中濃度上昇とともに低くなる特徴があります。
→血中総濃度の上昇率が高くても遊離型濃度が実は高くなっていて副作用が発現しやすくなる。

リドカイン

肝代謝型のため初回通過効果の影響が大きく肝血流量によってクリアランスが決まります。
循環血流量が変わる病態が背景にあるときは注意です。
蛋白結合率が70%と高いため心筋梗塞などα1酸性糖タンパクが上昇する病態では通常より多くの用量が必要となります。

フレカイニド

肝代謝型、Naチャネル抑制からの回復速度が遅いため一度血中濃度が高くなると副作用発現率が高くなります。

アミオダロン

Kチャネル遮断が主だが、実はマルチプルです。
脂溶性のため脂肪組織への分布が著明になり、一度吸収されるとその消失半減期は最長で3ヶ月。
初回負荷は必須の薬です。
相互作用ではP糖蛋白の基質となるため注意。
血中濃度2.5μg/mL以上で心外性副作用の上昇。
代謝物であるデスエチルアミオダロンの血中濃度が0.6μg/mL以上で肺毒性があります。

ニフェカラント

Kチャネルブロックです。アミオダロンのようなマルチプルではなく、用量依存でKチャネルの遮断→QT延長させます。
QT延長することでTdPのリスクが高まるので、QT間隔のモニタリングを慎重に行います。

ソタロール

Kチャネル遮断ですが、低濃度でβ遮断もあります。
腎排泄型のため血中濃度の上昇には注意が必要です。
β遮断作用が強く心機能低下例では陰性変力作用の効果が出すぎて悪化の原因になるため投与量には十分な注意が必要。

抗てんかん薬

薬物相互作用が多いのが抗てんかん薬です。
有効性と安全性を担保する場合はやはりTDMが必要になってきます。

フェニトイン・ホスフェニトイン

部分・全般てんかんに用います。
ジアゼパムで効かない場合の2ndチョイスです。
フェニトインの有効血中濃度は10-20μg/mL。

ホスフェニトインはプロドラッグでフェニトインによる組織障害性が改善されたものです。

フェニトインの代謝は飽和があるため急激に血中濃度が上昇する可能性があります。
特に蛋白結合率が高いので低Albの患者さんでは補正する必要があります。

補正血中濃度=実測血中濃度 / (0.9×血清Alb/4.4)+0.1
尿毒症がある場合は0.9へさらに0.48を掛けます。

フェノバルビタール

小児患者に使われることがあるが、活動性の行動異常などがあるため使用頻度は限られます。
有効血中濃度は15-40μg/mL。